2010年10月7日木曜日

コストダウン=機能美


弊社は外構施設の設計、施工を手がけています。
設計を依頼され、一番最初に行うことは、計画地の立地環境の把握です。
縁があり、設計をさせていただくのですから、計画する環境下に、最も適した素材を吟味し、正しく使い、正しく施工することで、美しく、長く愛される施設を造りたいと考えています。
イニシャルコスト(初期投資)の低減はもちろん考慮しますが、最も大切なのはトータルコストの低減だと考えます。

ボードウォークやデッキを例に挙げると、「水平に板を並べるだけ」と簡単に考え、設計、施工されている物件が多すぎるように感じます。
表面にデッキ材が整然を並んでいれば良いと、コストを大幅に下げて、「臭いものには蓋をする」かのごとく設計や施工をされている現場を見て、がっかりする機会が増えています。
そのような現場は、竣工後10年も経たないうちに不具合が発生し、期待寿命を全うできず、結果、“危険な施設”と判断され、解体、撤去されてしまいます。
すなわち、地球に多大なゴミを残すに過ぎない仕事となってしまうのです。
永い永い地球の歴史から見れば、他社の3倍長持ちしようが、小さなことかもしれませんが、せめて、次の世代まで使い続けられ、そして、その施設が寿命を迎えた時には、資源として受け継がれるようなことを考え、当初から、設計、施工を行いたいと考えています。

一方、このような経済の下では、きれいごとばかりは言ってられません。
この時代に於いては、イニシャルコストの低減も不可欠です。
しからば、魅力があり、長持ちする施設を安く造るにはどうしたらいいのでしょう。

その答えとして弊社が出した結論は、「適材適所」という古来からの発想です。
例えば、ボードウォークで最も大切なのは、「下地」として構成される部位です。
構造物の劣化診断を行うと、根太や大引き、支持脚といった“隠れてしまう部材”の性能に対し、あまりにも関心が持たれず設計、施工されていることが解ります。
よくある事例ですが、痛んだデッキ材を剥いでみると、水や湿気が溜まり、“お風呂に蓋をしたような状態”となっているケースが多々見受けられます。
そのような環境下では、デッキ材を固定している根太が腐食するのは無理もありません。
これは部材選定以前の問題で、誤った知識や認識で計画されているとしか言いようがありません。
建設業も分業化され、トータルで物事を考える「質」が低レベル化しているように感じます。
「適材適所」と前述しましたが、施設を設計する上では、まず、設置環境を把握し、そこに「適材適所」な部材選定を行い設計することが、ライフサイクルコストを低く抑える技術だと考えます。
また、コストダウンには、製造時の部材長や、効率的な配列など、生産工場や職人の効率性をも踏まえた、無駄の極力少ないトータルマネジメントが不可欠です。
同時にボードウォークと取り合う防護柵やベンチも、設計時に、そのピッチを工夫するだけで、現場での加工の少ない、美しい仕上がりとなります。

コストダウンとは、安く買い叩けるメーカーを寄せ集め、場当たり的な工事をすることではなく、設計時から起こりうる、あらゆることを想定し、無駄を排除し、素材の性能を高め、効率を追及することではないでしょうか。
設計時からしっかり計画されている構造物は、仕上がりも美しく、あらゆることに配慮された機能美さえ感じることがあります。
淘汰が進む建設業界ですが、資本力や会社の看板ではなく、今だからこそ、将来の地球環境も視野に入れた設計、施工を行うことが、ここに立つものの使命だと感じています。

デザインとは、イニシャルコストや意匠だけでなく、トータルマネジメントされた美しい機能美(適材適所)であってほしいと願う次第です。