2008年10月30日木曜日

ノエルの倒産に想う

諫早の現場にいる私に取引先からノエルが破産手続き開始の申し立てを行ったと携帯に連絡が入った。
私の幼馴染が取締役をしているからだ。
ウェブを見ると負債総額は414 億円(概算 平成20 年10 月30 日現在)という。
同社は最近、東証二部に上場したばかりだ。
上場には様々な審査があるが、それをクリアしたのはつい最近のこと。
首都圏を中心に幅広く不動産事業を展開していたが、昨今の一連の倒産劇と同様の結末だ。
金融機関や東証は、同社のビジネスモデルを認め、融資をし、上場を認めたのではなかったのか。
内部事情は知る由もないが、複雑化した仕入や商品、会計制度、更には日本の実需には無縁のサブプライムローン問題等、「お客様へ快適な住まいを提供する仕事」があまりにも複雑化しすぎたのではないだろうか。

ただ、民事再生や更生法の申請ではなく、破産手続きの開始を申し立てたことが心配だ。

そんな考察と、幼馴染の彼を想う気持ちは、自分の心の中で同じの位置におけるはずがない。Yよ、今は経営者として、いや人間として今までに経験もしたことのないほどのものを抱えているだろう。人として精一杯の対応をして、難局に背を向けず、蓋をすることなく前に進むしかないと思う。友人として何かできればと思うが、きっと彼なら前に進んでくれると信じている。


=帝国データバンク ニュースより転載=
TDB企業コード:200834071「神奈川・東京」 
東証2部上場で総合不動産業の(株)ノエル(資本金 22億6879万4466円、川崎市高津区二子5-1-1、代表金古政利氏、従業員283名)と(株)ENR(資本金5777万5000円、港区虎ノ門1-4-3、代表奥村秀哉氏ほか1名、従業員16名)の2社は、10月30日に東京地裁へ自己破産を申請し、破産手続き開始決定を受けた。 
申請代理人は渡邊顯弁護士(港区虎ノ門4-3-1、電話03-5405-4080)。 
ノエルは、1969年(昭和44年)9月創業、72年(昭和47年)2月に法人改組した中堅デベロッパーで2007年8月に東証2部へ上場を果たしていた。
東急田園都市線中心に「グランノエル」シリーズのマンション分譲や用地売買を主体に運営、そのほか建売、仲介・管理も手がけ、近年はマンション用地の需要が旺盛であったほか、投資用賃貸マンションや商業施設など不動産ファンド向けの開発物件が好調で年々業績を伸ばし、2007年8月期には年売上高約777億9200万円をあげていた。 
しかし、改正建築基準法による建築確認の遅延、分譲住宅価格上昇に伴う顧客の買い控えに加え、サブプライムローン問題に端を発した金融市場の混乱等、不動産業界を取り巻く急激な変化で、2008年8月期の年売上高は約653億円にまで落ち込み、売買契約の解除等に伴う費用などで最終損益は約54億3000万円の欠損に転落する見通しを発表。
ここ数年は、拡大路線を推し進めてきたことで資金需要は旺盛で、これらを金融機関からの借り入れに依存してきたため、不動産市況の悪化が経営を圧迫。
販売用不動産の販売促進による棚卸資産の圧縮や経営効率化を目指すとともに、資本提携先を模索してきたが実現に至らず、保有物件売却計画の大幅な遅れや借入金の返済遅延、その他未払いの発生など資金繰りはひっ迫し、今回の措置となった。 
ENRは2004年(平成16年)4月に設立した不動産会社。
都心の高級住宅に特化したプロパティマネジメント事業や賃貸・売買仲介を行い、2007年8月期には約9億8000万円の年売上高を計上していたが、ノエルに連鎖する形となった。 
負債は、ノエルが約414億円、ENRが約3億円で2社合計で約417億円。

2008年10月23日木曜日

諫早市こどもの城現場レポート9

出張で福岡を訪れたので、足を伸ばし20日ぶりに諫早の現場を訪ねました。

建築、土木工事ともこの20日の間、天気にも恵まれ順調な進捗です。左の写真は建築工事で、建物の壁面にリバースウッドが使用されています。
1,000㎡に及ぶ壁面なのですが、ここに使用されているリバースウッドの原料は、以前、この地に林立していた杉材です。
通常は、廃棄処分されてしまうものを原料とさせていただきました。
もちろん、普通の製品を製造するのと比較し、時間もコストもかかるのですが、「こどもの城」という文教施設ゆえ、資源の大切さを伝えるべく、再資源化の提案をさせていただきました。
発注者の諫早市ご担当者様も非常に前向きにお取り組みいただき、このような姿として提案が結実しました。
写真手前にコンクリート面が見えますが、11月にはここに水路とデッキも出来上がる予定です。

一方、外構工事も半ばに差し掛かり、階段を除く平面部のデッキはほぼ完了しました。
あずまやの屋根も仕上がり、職人さん達の昼の休憩所となっています。
この現場の職人さんはほとんどが一般家屋の大工さんなので、腕がいい。
東京でPCに向かって図面をひくのも大切な仕事ですが、現場に出て職人さんとコミニュケーションを取り、図面通りに、確実にきれいに納まるよう意見交換をする時間も大切です。
そんな時間が、次なる良いモノを創造する貴重なノウハウに繋がることが多々あります。
良い製品、良い設計、良い施工とどれひとつ欠けても良いモノはできあがりません。
現場の大工さんから製品の製造スタッフまで、モノづくりに係わる全ての人々がきれいに連携できる事業環境を構築して行きたいものです。

2008年10月18日土曜日

風をよむ

久しぶりにセーリングを楽しみました。
学生時代の仲間と月々数千円ずつ出し合って、かれこれ10年以上清水港(静岡県)にヨットを泊めています。

「風をよむ」という経済番組がありますが、ヨットはまさに風をよみ、それを動力として動く乗り物です。

大海に出ると、全てこの先に起こるであろうあらゆる事象を予測して、「」の行動を決断、実行します。
現代はGPSや携帯電話等、船上にいながらも様々な情報を手に入れることができますが、昔は雲をよみ、潮をよみ、風をよみ...つまり自然条件に経験から予測をつけ、大海原を航海していました。






仕事も同じように思います。
現代は通信技術が大幅に進歩し、あらゆる情報を即座に入手することが可能です。
しかし、溢れる情報をどう収集するか、どう判断するかはその人の価値観や積み上げた経験によります。
また、情報だけがあっても、実際にその場で、どう行動できるのか...


通信技術が発達して、情報に恵まれていても、雲をよみ、潮をよみ、船の性能をよみ、今の一歩先の事態に備え、今の行動を決める。
そして、予測した事態となるかならぬか、予測した(悪い)状況下において的確な行動が取れるか取れぬか...
常にこの予測と対処が繰り返されます。

これは趣味も仕事も同じですね。
何事も真剣に楽しむには予測と判断、そしてそれに伴う行動が必要なのだということでしょう。

2008年10月15日水曜日

リスクとセルフディフェンス

沖縄や九州で仕事をよくいただくのですが、一方で、セルフディフェンスをしっかりと行わなければならない事態も発生しています。

これは2006年の記事ですが・・・

■長崎も「5年後破たん」 再建団体転落 知事が厳しい見通し
長崎県の金子原二郎知事は7日、佐賀県が2010年度にも、国の指揮下で財政再建を進める「財政再建団体」に 転落する可能性を示したことに関連し「長崎県も2012年度には佐賀県と同じになる。再度、財政の見直しが必要だ」 と語り、長崎県も財政が破たんしかねない厳しい状況にあることを明らかにした。
同県佐世保市であった県商工会議所連合会議員大会のあいさつの中で述べた。
金子知事は「県はこれまで2回、財政を見直し、行財政改革もやってきたが、今後は(収支不足のために取り崩す)県の貯金(基金)がなくなってしまう」と述べ、このままでは財政再建団体になる恐れがあるとの見通しを示した。

サブプライムローン問題に端を発し、日本でも各地のマンションデベロッパーの倒産、民事再生が相次ぎ、遂にはJ-REIT(不動産投資信託)を手がけているニューシティレジデンス投資法人が負債総額1123億で民事再生手続申し立てをしました。

ここまでくると官民問わず、セルフディフェンスを強化していくしか手はありません。
しかし、私は問題の根本は「実経済と資本経済の乖離」ではないかと推測しています。
ここで敢えてセルフディフェンスと申し上げたのは、「リスクマネジメント=保険」的な考え方が一般化する中、保険自体が実経済と乖離した存在と考えているからです。

ではセルフディフェンスとは・・・
私は実務的にも経営的にも実利が大切だと常々考えています。
建設業で言えば五月雨的な商流(分業)、他人資本による会社支配等、個の意思が法人の傘を被ると目指すべき方向性と異なる方へ向かう事例が世にはたくさんあります。
それゆえ、上場をせず(他者の支配を排し)、信じる技術を売り物にする会社が台頭する時代が来ると考えています。
しかし、上場していなくとも企業ゆえ、会計制度は公平です。
ここでも時価会計等、資本主義を象徴する最たる制度が導入されています。
資産(株式、在庫、退職金積立金etc)が仕入れた額ではなく、決算時の時価で評価されます。
資産ゆえ、増えることもあれば目減りすることもあります。
これは通常の業務を積み重ねたいわゆる業績実績に大きな影響を与えます。
もちろん時価会計で+となれば御の字。
そうでない場合は積み上げた業績から-されます。
企業ゆえ、ある程度の資産を持たねば、健全な経営はできません。
このような現状を考えると、大きな企業、団体で設立時の意思を健全に継続していくことが如何に困難なことであるか推察されます。
そんな中でも、やると決めたからには他人任せにせず、自らの経営資源をつぎ込み、良い仕事をする、そして企業の都合ではなく、人間としてのきちんと約束を果たすこと。
セルフディフェンスとは、まずこんな小さなことからはじまることだと思います。

2008年10月9日木曜日

ご冥福をお祈りいたします

先日、弊社の開催した技術研修会に参加してくれた取引先の新入社員さんがお亡くなりになりました。
faxで訃報が届いたのですが、それを知ったスタッフは皆呆然としていました。

背が高く、笑顔が素敵な若者で、研修会終了後の懇親会では隣に座ってくれ、随分長い時間話し込みました。
大学では建築を専攻していたそうですが、外構施設の面白さに魅せられ、この業界に入ったそうです。
昨今、建設業は若者に敬遠されているますが、彼はモノづくりの楽しさ、これから始まる社会人としての生活を楽しそうに話していました。

出逢いと別れは同じ数だけあり、それは人にとって避けがたい現実ですが、あまりにも短い人生とお付き合いに呆然としてしまいます。

どうか笑顔のまま天に召されますように・・・


2008年10月8日水曜日

合成木材の悪い例

最近、ブログを通じてあらゆる事象を調べています。
HPでは、カタログを眺めるのと同様に、「良いこと」しか掲載されていませんが、ブログではエンドユーザーの声をはじめとする「悪い例」を 発見することができます。
今回は、我々の業務に関連する面白い記事を発見したのでご紹介します。

日比野設計さんという幼稚園の園舎を多く手掛ける設計事務所のブログですが、合成木材の悪い例が紹介されています。

「幼児の城ブログ」2007.03.06 Tuesday「合成木材の悪い例」
これはE社の製品と思われます。
製品名のS(Strand)は綱や紐などを表す英語ですが、掲載されている写真を見るとまさにデッキ材が紐状に分解しています。


一方、合成木材をこういう視点で導入しているという記事もあります。
「幼児の城ブログ」2006.09.08 Friday「園舎とウッドデッキ」


我々のリバースウッドも材温の上昇に対する材長変化への対策は随分と行ってきました。
基準寸法や施工マニュアルを遵守すれば、この熱膨張への対応はほぼ完璧な状態までコントロールできるようになっています。
しかし、最近は、熱膨張よりも水分を吸収した際の膨張が大きいという実験結果が出ており、この対策もしっかりして行かなくてはなりません。

特に床下の湿気対策は重要な鍵になってくると思います。
基本設計時には水勾配や排水構造が正確に判断できない案件が多いと思いますが、デッキを仕上げれば良いという概念ではなく、施主へ下部構造も提案する(確認する)等、「ひと手間」を加えることにより、我々が提供する製品の本来の性能が発揮されます。

製品開発、提案営業、設計、施工、メンテナンスを一貫して行う我々のグループならではの「質の高い仕事」を提供していきましょう。

(社内イントラネット掲載記事より転載)

2008年10月3日金曜日

諫早市こどもの城現場レポート8(工事前半最終回)


現場を終え、19時長崎空港発の便で東京へ帰ってきました。
事務所へ帰り、一部設計変更が発生した箇所の構造計算を終え、ようやく今、一息つくことが出来ました。
公共事業の場合は、今回のように設計変更が発生した場合は、経験値ではなく、しっかりと書類を提出していかなくてはなりません。
明日、現場の協議会が開催される予定だそうで、そこに間に合わせる必要があったのです。

9/25から10/3まで、都合9日間現場にいたことになります。
私は技術指導という立場で出向いたので、リバースウッドの管理基準を現場に伝えることが業務です。
それにしては長かった・・・
と、疲労が蓄積しました・・・

方向性は決まったので、あとは現場の優秀な職人さんたちに全てを託しましょう。
賢ちゃん、あとは頼んだよ!

工事が後半戦に突入した頃にまた現場の様子をお伝えします。
その頃はツクツクボウシも鳴きやんでるんだろうな・・・

2008年10月1日水曜日

諫早市こどもの城現場レポート7

今日から10月に入りました。
昨日、おとといの台風による大雨が嘘のように晴れ渡り、絶好の現場日和です。
現場は、今日からデッキ材の貼り込みが始まりました。
鉄骨ベースなので、特段、シビアにレベルを取る必要もないため、単純にデッキをビスで固定するだけです。
しかし、ここで使用している根太はt3.2という根太には十分過ぎるほどの厚さです。
先日も、この根太にφ15mmの孔をあけるのに苦労をし、結局、アトラーという工具を導入した経緯があります。

ここでsai-BRANDの鋼製下地専用ビス、製品名「どりどり君」の登場です。
どりどり君の規格は 六角孔M6*45(SUS410:ディスゴ処理) となります。
再生木材の熱膨張による伸縮応力に余裕を持って対応するために、この規格になりました。


標準仕様の根太はZAMのt1.6ですが、これはものの3秒程度で固定されます。
さて、今回のt3.2はどうでしょうか?
下孔なしでチャレンジしましたが、ほんの5~6秒で固定が完了しました。



このどりどり君のせん断力は1本あたり約2tもあります。
デッキシステムの中では、デッキ材とこのビスだけが表面に出てくる部材です。
ほんの頭をのぞかせるだけですが、ビスラインもデッキのデザインの重要な要素です。
こだわって開発をしましたが、こんなところで報われました。