2009年3月28日土曜日

焼津漁港ステージデッキ・見晴台 現場レポート10(最終回)

【ステージデッキ&見晴らしデッキ】
3/26に本検査を終え、晴れて工事が完了しました。
設計、製作、施工の全てをプロデュースできた現場のため、細心の心配りができた自身作とすることができました。
これもご発注をいただいた静岡県様、元請の株式会社橋本組様、それに資材、労力を提供して下さった各協力会社様のおかげです。

弊社は、メーカーとして、設計事務所として、建設会社としてそれぞれの機能を有しています。
お客様の立場に応じてその姿を変幻自在に変えることができるのが強みとも言えます。
しかし、公共事業に携わる場合、今回のように設計~施工までフルプロデュースできるプロジェクトは決して多くはありません。今回はむしろ稀なケースです。

公共事業は地方経済を活性化させるという発注趣旨があります。
そのため、施工は当然、地元の業者で行うのが良しとされます。

私もそう思います。

今回も鉄骨の製作、据付、デッキ貼りという主たる業務は全て地元の会社で行っていただきました。
「工事期間中の休日に家族を3度も現場に連れて行ったよ」と笑う職人さんの笑顔に接すると、「俺がつくった」というモノづくりに携わる者の根底にある自負心に触れることができます。
自分や家族の生活圏にある構造物に「俺がつくった」という自負心と愛着心を持った方々がたくさんおられれば、その施設は長らく愛され続けることになると考えています。

モノづくりに携わる人間は、図面という共通な言語と、それまでに体得した様々な経験から会話をします。
ですから発注者や元請や下請という上下関係だけで仕事をこなすと決して良い仕事はできません。
それぞれの立場は「役割」という言葉に置き換え、互いの役割(=責任)を配慮しつつ、自らの役割を果たす。
皆が最終形を想定でき、その中で自分の「守備範囲」を判断する。
野球に例えれば、守備範囲が広い選手は「上手い」のです。
それを実現するためには、自分の役割はもとより、互いの役割を配慮し、先を読み、そして動く。
この行動を個人としてそして企業としてとること。
どんな仕事でも大切なことですよね。

信頼できるパートナー達とできるモノづくり。
今回もその醍醐味を堪能することができました。
関係者の皆様、本当にありがとうございました。

2009年3月22日日曜日

鹿児島港 北埠頭展望デッキ改修工事

鹿児島港の片隅に老朽化した展望台がありました。 フェリー埠頭のそばで、港内に整備された広大なボードウォークの終点にあたる施設なので、地元の方や観光でフェリーに乗られたことのある方は目にしたことがあるのではないでしょうか。
地元、鹿児島県は奄美大島の「イタジイ」という木材の集成材がつくられた木製の展望台でしたが、残念なことながら湿気とこれを好むシロアリにやられ、床板等が腐食し、立入禁止となっていた施設です。
今回の工事は、この「イタジイ」を原料として再生木材としてリバース(再生)し、施設の資材として再利用するものです。
2年前に1階部分の床を同じリバースデッキ工法でリバースしたのですが、写真のように2階の床が張り出しているため、内部に自然光が届かず、暗いイメージがありました。
そこで地元鹿児島の新日本技術コンサルタントさんと施設計画を行い、今回の改修工事と相成りました。

当初、当方からは、2階部分の梁を残し、パーゴラ風にデザインし、1階部分に明るい光が届く施設にしましょうという提案を行っていましたが、同じく地元の木製施設の専門会社であるアリモト工業さんの劣化診断により、梁も支柱も腐朽が進行し、構造部材としての利用は困難という結果が出され、構造体をすべて改修する計画となりました。


左の写真が完成写真ですが、1階の床まで太陽光が届き、明、誰もが登ってみたい展望台に生まれ変わりました。
今回の工事では、弊社はリバースウッドのメーカーとして設計のサポートと材料の製造(リバースデッキ工法)を行っただけなのですが、改修工事とは難しいもので、施設を壊すまで下部構造が不明であったり、想定したものと異なっていたり・・・。

これを現地で技術調整をしてくれたのがアリモト工業さんでした。
同社は弊社と同じように、日本で数少ない木材劣化診断士の有資格者を持つ会社で、現場の状況を的確にお伝えいただき、また創意工夫をされ、見事な作品に仕上げてくれました。


下地には、海際で、さらに湿度も高い設置環境であることから、「マリンランバー」を使用しましたが、異型の灯台まわりは、このように面倒な下地をきっちりと組んでくれました。
マリンランバーは、ガラス繊維を発砲プラスチックで固めた不朽の素材です。
しかし、現場加工はガラス繊維が相手なので、革手袋、マスクをしても少なからず皮膚に付着します。
すると職人さんは家に帰り、お風呂に入るまで「痒い」のです。
こんな作業を地道に、きっちりこなしていただいたわけです。


















上の2枚は展望台上部からの景色です。
ご覧のように、展望台に上がると再び階段があり、ダブルデッキとなっています。
きっとこの階段に座り、鹿児島港を眺める人々で賑わうことでしょう。
ここにあった展望台の木材を燃やすことなく、資源としてリサイクルされ、再びこの現地に戻すことができました。
そんなことは利用者の方々は知る由もないでしょう。
気づかないうちにこのようなリサイクルが行われる。
そんなことが当たり前の世の中になりますように・・・

最後になりましたが、本工事に関わったすべての方々にお礼を申し上げます。

2009年3月14日土曜日

コストバランスについて

ここは都内でボードウォークを施工中のとある現場だ。
陸地と砂浜の境界にあるボードウォークの改修工事だ。
我々もこの計画にはプロポーザルをしたが、結局、コスト面からこの仕様が選択されたようだ。
「改修」を主な業務とする弊社にとって、既設の構造物が「なぜ傷んだのか」という劣化診断とその対応策を講ずることをノウハウとしている。
ここは「飛砂対策」がその鍵となり、下地構造の改善が、解決要因となる。
しかし、残念なことに海辺で、一般住宅と同じアルミ根太と鋼製束が使用されている。

これでいいのかと問いたいが、選択肢の重要な要素にイニシャルコストがある。
ランニングコストや、ライフサイクルコストという計画段階では見え難いコストを発注者へどう見せていくかという課題を胸に、今後の糧としよう。